逆構造定理の略証

証明には, グラフ理論における次の事実を用います.

  • 元のグラフにおけるカットセットは双対グラフにおいてタイセットになる.
  • 元のグラフにおけるタイセットは双対グラフにおいてカットセットになる.

ここで, カットセットとは, それらをグラフから取り除くと, グラフが二分されてしまうような枝の集合のことです. すなわち, 節点を一般化したものがカットセットです. また, タイセットとは閉路(ループ) を構成するような枝の集合のことです. つまり, 上記の事実は, 「ハブとループは双対関係にある」 ということを述べています. このイメージを以下の図に示します.

さて, 上の事実を電気回路の言葉に焼き直すとどうなるでしょうか. キルヒホッフの電圧則と電流則を思い出しましょう. 電圧則とは, 閉路上での電圧の和が0 になるという法則です. 電流則とは, 節点に流入出する電流の総和が0 になるという法則です. つまり, 電圧則はタイセット上の電圧に関して, 電流則はカットセット上の電流に関して成り立つ法則です. したがって, 双対グラフをとるのと同時に, 各枝の電圧・電流の役割を入れ替えるという操作を行えば, 次の事実が成り立ちます.

  • 元の回路における電流則は双対回路において電圧則になる.
  • 元の回路における電圧則は双対回路において電流則になる.

これを電圧則と電流則の双対性といいます.

ここで, 勘の良い(あるいは単位にうるさい) 人は, 電圧と電流を入れ替えるといっても単位が違うじゃないか, と気付いたことかと思います. たしかにその通りで, 具体的な問題を考えるときは, 適当な抵抗\(R_0\)をかけて単位を合わせてやる必要があります. つまり, 元の回路N を構成する各枝上の電圧・電流が\( (V_k, I_k)\) であるとき, 双対回路N′ の対応する枝上での電圧・電流とします. 双対回路N'の対応する枝上での電圧・電流\((V_k',I_k')=(R_0 I_k,V_k/R_0)\)とします. このとき, 各枝上でのオームの法則はどうなっているでしょうか? 元回路の枝ではオームの法則\(V_k=Z_k I_k\)が成り立っているので \begin{align*} V_k' &:= R_0 I_k \\ &= R_0 \cdot \frac{V_k}{Z_k} \\ &= \frac{R_0^2}{Z_k} \cdot \frac{V_k}{R_0} \\ &=: \frac{R_0^2}{Z_k} \cdot I_k' \end{align*} となります. すなわち, 双対回路の各枝のインピーダンス\(Z_k'\)が \[ Z_k'= \frac{R_0^2}{Z_k} \] であればよいということです. 言い換えると, 双対回路の各枝が, 元回路の対応する枝の\(R_0\)に関する逆回路になっていればよいわけです. このように構成される双対回路を\(R_0\)に関する逆構造というのでした. 結局, 上のように定めた\((V_k',I_k')\)は\(R_0\)に関する逆構造における電圧・電流分布となります. 以上の事実を端子間インピーダンス\(Z\)をもつ二端子RLC回路に適用すれば, \(R_0\)に関する逆構造の端子間インピーダンス\(Z'\)について \[ ZZ'=R_0^2 \] が成り立つことが分かります. \(\square\)

(浦出芳郎 作成)