幾何学的電気回路指南

幾何学の難問に電気回路で挑戦

あなたは 人目の貴重なお客様です

since 2001.5.13


目次
[1]幾何学的電気回路指南
[2]無限ラダーに隠された黄金比
[3]幾何学の難問に電気回路で挑戦
[-]Go To My Homepage

[1]幾何学的電気回路指南

難問にチャレンジする前に、ここでは抵抗回路を図形に置き換えて 考える方法を提示します。電気回路は普通、解析的に扱われることがほとんどで 幾何学と何の接点もないもののように思われます。ところが、幾何学的に扱うこ とによって非常に多くの情報を盛り込むことができ、違った視点から回路を理解 できます。といっても、難しい話ではなくオームの法則さえ知っていれば理解でき るので安心して下さい。まず下図を見てみましょう。


オームの法則は周知のとおり、抵抗R、印加電圧V、電流Iとして

I=V/R

だから電流-電圧特性は図右のように原点を通る 傾き1/Rの半直線になる。ここで、印加電圧か電流を決めてやると 動作点が定まり網がけしたような矩形(長方形)が描ける。この矩形の 面積が抵抗の消費電力を表しているのも 簡単にわかるでしょう。つまり、この矩形を見るだけで、 電圧(横幅)、電流(縦幅)、抵抗(対角線の傾き)、消費電力(面積)がわかってしまう のです!!

その他、電気回路を習っている人には、この図を分析することで キルヒホッフの電流則-電圧則、抵抗-コンダクタンス、 カットセット-タイセット等さまざまな双対の要素が理解できるので 、電気回路習得者でも得るところは大きいと思われます。このような 専門知識がいるところ(青字で記載)は読みとばしても結構ですが、 そんなに難しいことは書いてないので高校生(あるいはそれ以下でも) 読んでみてください。

最後に注意しなければならないのは上の図でいえば直線の傾きが1なので 抵抗値はその逆数の1Ωと決めつけてしまうことである。これは 電圧電流特性図の1目盛が1V、1Aのときの話で、1目盛1V、1mAならば 同じ図でも抵抗値は1kΩである。このように、規格化は 自由におこなってよい。次に直列接続と並列接続の場合についてみ てみよう。


直列接続の場合、2つの抵抗に流れる電流が共通なので 矩形の縦幅は共通である。しかし、電圧は抵抗値に比例して 分圧されるので図のように矩形が隣に並んだ形になる。 そして全体の矩形が合成抵抗についての情報を表している。 つまり、その面積が全体の消費電力をあらわし、対角の傾きが 合成抵抗の抵抗値の逆数になっている。このことから直列接続の 抵抗の合成式、R=R1+R2、がでてくる。(自分で確かめてみよう!)


並列接続の場合、2つの抵抗にかかる電圧が共通なので 矩形の横幅は共通である。しかし、電流は抵抗値に反比例して 分流されるので図のように上に矩形が積み上がった形になる。 そして全体の矩形が合成抵抗についての情報を表している。 つまり、その面積が全体の消費電力をあらわし、対角の傾きが 合成抵抗の抵抗値の逆数になっている。このことから並列接続の 抵抗の合成式、1/R=1/R1+1/R2、がでてくる。(これも確かめてみよう!)

勘のいい人はもう気付いたと思うが、縦と横を入れ換えると直列も並列も 同じ構造をしている。これは電圧と電流の関係を入れ換えて(縦と横を 入れ換えることに対応)直列並列変換をおこなってやると同じ構造になる ことを意味している。これは、いわゆる双対変換である!!
もうひとつ 、縦と横を入れ換えることで直線の傾きは逆数になる。この傾きは抵抗値 そのもので抵抗とコンダクタンス(抵抗の逆数)も双対用語であ る!!つまり語句を双対な用語で置き換えてやったら同じ図になるので ある。


ブリッジについても考えてみよう、


上図のブリッジの両端にある電圧を印加したとき、R1:R2=R3:R4(つまり R1×R4=R2×R3)のときR5の両端の電位差が0になるのでR5に電流は流れ ない。この状態が平衡状態である。これを今までのように幾何学的に考えて みよう。簡単のためにグラフ1目盛、1V、1Aのときで、初期状態:R1=2Ω、 R2=0.5Ω、R3=0.5Ω、R4=2Ω、R5=1Ωからスタートして R2とR3を変えることで平衡状態を作ることを考えよう。

初期状態では上図3つ のグラフの一番左(四畳半みたいなやつ)になる。この状態では、R1×R4>R2×R3 の非平衡状態でR5に電流が流れている。このことは、図のR5に当たる部分の 面積が0でない、つまり電力を消費していることから分かる。だから、 平衡状態 にするには、この中央部の面積を0にすることを考えればよい。いまは、R2とR3 を変えることを考えるので、図のR2とR3に当たる矩形の横の比率を大きくする (抵抗値を上げることで対角線の傾きを小さくしてやる)とよいことが分かる。 これは、式の上から考えて平衡状態(R1:R2=R3:R4)にちかづけるためにR2と R3を大きくすることと矛盾しない(当然ではあるが)。平衡条件に近づけていく 推移を上図に示している。
平衡状態では、ちゃんとR5に当たる部分が消えてな くなっている。矩形が無くなったから傾きが分からないではないか、と思う人 もいるかも知れませんが、R5には電流が流れないのでR5の値はなんでもよく もっといえば短絡でも開放でもよいことになる。ここでは、2種類の抵抗値を 変化させましたが、1種類の抵抗値を変えても平衡状態に変えれるのでこの様子 を図にしてみるとおもしろい発見があるでしょう。(ドロー系のソフトを活用 して作図をしてみるのもいいでしょう)

以上より分かったことは、抵抗回路は所詮、今までにあげたような回路の組合せ なので、どんな抵抗回路でもそれぞれの抵抗に対応した矩形で敷き詰められた 矩形に変換可能だということである。
注意してもらいたいのは、回路全体から なる図形は必ず矩形で突起やヘコミはなく、そこに敷き詰められた、矩形には すき間が無いということである。逆にいえば、そうなるようにそれぞれの矩形 の大きさが(縦横の比は同じまま)変化して前文の条件を満たしてあるのである。


これで題目にあげた難問を電気回路で実験するために必要な知識は揃いました。 ただ、回路を図形に変換するメリットが直接わかる無限ラダーの問題を考えて より理解を深めてからにしましょう。(はやく実験が知りたい!というひとは 飛ばしても結構です。)

[2]無限ラダーに隠された黄金比
[3]幾何学の難問に電気回路で挑戦