光の波動性を表す実験として、下のようなヤングの干渉実験が有名である。
光子が2重スリットの左側を通る場合と、右側を通る場合の重ね合わせとなり、スクリーン上で干渉する。このとき、干渉する条件は光子が2重スリットのどちらを通ったかが分からないことである。2重スリットのところでどちらを分かったか分かるようにしていても、その後その量子的な情報を消すことで干渉を復活させることができる。これを、Quantum Eraserと呼ぶ。
以下の実験は、文献 [Rachel Hillmer and Paul Kwiat: A Do-It-Yourself Quantum Eraser, Scientific American Magazine 5 (2007) 72-77] を参考に行った。
レーザポインタを用いた干渉実験
用意するもの
- レーザポインタ:緑でも赤でも可(緑の方が見やすい?)
- スクリーン:紙でOK
- 細線:細いほど干渉縞が広がるが、この実験では適度に太い電子部品(抵抗)の脚の部分を利用した
セッティング
- 細線をレーザの前の中心に配置する
- スクリーンは干渉縞が見える程度に離して配置(数10cm-数m程度)
以上のように配置することで、光子が細線の右側と左側を通りうることになり、干渉が見られる状況になる。
干渉の消失とQuantum Eraser
加えて用意するもの
- 偏光板3枚:3枚のうち2枚は細線の両側に偏光方向を直交させてはり合わせ [下図参照]
セッティング [下図参照]
- レーザポインタからの出射光を45度偏光にする(偏光板を置いてもよい)
- 細線と偏光板を図のように配置
- スクリーンの手前に偏光板(3)を配置する
実験
実験1:スクリーン手前の偏光板がないとき
- 右と左を通った場合で偏光が異なり、経路が区別できるため干渉はみられない
実験2:スクリーン手前の偏光板を垂直に配置したとき [下図左]
- 左を通過した場合のみを選択しているので干渉はみられない
実験3:スクリーン手前の偏光板を水平に配置したとき [下図中央]
- 右を通過した場合のみを選択しているので干渉はみられない
実験4:スクリーン手前の偏光板を45度傾けて配置したとき [下図右]
- 45度の偏光は、右、左どちらを通ったか区別できないので干渉がみられる
偏光板を回転させたときのムービー
この実験ではレーザーを光源としており、干渉縞が目視で確認できる。仮に入射光を弱くして、光子が一つずつ装置を通過するような状況をつくると、干渉縞の強度に応じた確率で光子がスクリーン上で検出されることになる。多くの光子の痕跡を集積することで、干渉縞が再現される。このような単一光子によるヤングの実験の例が
https://photonterrace.net/ja/photon/duality/ に解説されている。
この実験及びこのページの作成には、
北野研インターンの人に手伝ってもらいました。
ご協力ありがとうございました。